ブスがカリスマ美容師を予約したらカットに三時間かかった話
カリスマ美容師。
ドラマビューティフルライフのキムタクの役どころから爆発的に流行ったこの言葉。
誰しもたちまちかわいくしてくれる魔法使いのような存在。
私とカリスマの出会いはインスタを見たことから始まった。
そこに並ぶのはショートカット。ショートカット。ショートカット。
どれもこれもふわふわまぁるく可愛くて、一瞬で私の夢が膨らんだ。
ここに行けば、私もこうなれるんじゃないか?ショートカットに大振りピアスがしたい!と。
すぐさまその美容室に子連れOKかを確認し予約を取った。
ここまで伸ばしたし、もったいないなとなんとなく惰性で伸ばし続けてきた髪は今やロン毛の犬、アフガンハウンドのようになっていた。
生活感あふれるこのヘアスタイルから今すぐおさらばしたい!!
ふわふわで可愛いショートヘアーで、久しぶりに犬から人類に戻れるかもしれない!!
口コミを見ると、ちらほら出てくる「待たされる」の文字。
カリスマだからね。仕方ないよね。多少は待つ待つ!
その時は気づかなかった。
そんなぬるい話ではないことに。
------------------------
ついに当日を迎え、私は予約していた個室に通された。
子供ウェルカムというだけあって、YouTubeが見れるiPadも貸してもらえるし、個室にはオムツ替え台も完備。
カリスマは1日に40人ほどカットしているため、忙しすぎて切る以外の行程は全て別の人にお任せしているらしい。
さすがカリスマ。多忙を極めている。
日本人の同調精神が根本から染み付いているので、そんなにお客が来ているなら一層期待できる!と安心感と期待感に胸を震わせながら、シャンプー台へ。
シャンプーの間、子供どうするんだろ?と思ったら、
「お腹の上にどうぞー」
シャンプー台に横たわる私。
その私の上にまたがる我が子。
高さが上がっていく椅子。
これは…まるで…宮城で見た伊達政宗の騎馬像ではないか…
私が馬で、我が子が政宗公…
ここで家のお馬さんごっこが裏目に出ることとなり、子供は私の上で大喜びで跳ねている…
我が子よ。母は馬ではないのだ。鎮まれ。鎮まりたまえ…
母の願い虚しく、さらにここで我が子の最近のブームが繰り出されることとなる。
周囲の人へひたすら手を振りまくり始めたのである。
普段はベビーカーに乗りながら無差別に手を振るので、我が家では天皇皇后両陛下のパレードよろしく、天皇スタイルと呼ばれているのだが、それをこのシャンプー台の母の腹の上でも繰り広げだしたのである。
気を遣って手を振ってくれる隣の台の美容師さん。
ふふふと笑いながら洗髪を続ける私の美容師さん。
他のお客さんはもちろん皆顔にガーゼを載せられシャンプーしているので、手を振られていることなど知る由もない。
ここは巨人の優勝パレードでも、ライブ会場でもない!!無差別に手を振るのを!!そして私の上で跳ねるのをやめるんだ!!!!
母の願いは届かず、シャンプーが終わるまで子供は高い位置に大興奮でひたすらこれらが繰り広げられ、子供が落ちやしないかひやひやしながらのシャンプーは気持ちよさ5割減となり、非常にもったいないものとなった。
さて髪を洗ったら次はいよいよカット。
分け目をどうするか悩んでいる旨をアシスタントさんに伝えると
「暫定的にこちら側にしておくので、相談してみてください。」と。
その相談できる時を待った。
待ちに待った。
小1時間待った。
こない。
カリスマが、こない。
みなさんが思う、自分が一番ブスな瞬間ってどんな時ですか?
私の中のブスランキング1位は、まさに今この瞬間。
美容院のシャンプーあけ。
お店の明るい光に照らされ無造作に濡れそぼった髪が輪郭を隠すことなく、でかい顔面を強調し、お洒落な美容室と対比するように真顔で鏡に映るその顔である。
(ちなみに2位は地下鉄の電車の窓に映る顔)
このブス顔を小一時間眺め続けなくてはならない。
これはどんな苦行だろうか。
私は前世でどんな罪を犯したのだろう。
粗大ゴミにリサイクルシールを貼らずに出してしまいでもしたのだろうか。
はたまた少ないトイレットペーパーをわざと最後3cmだけ残して交換せずにトイレを出てしまったのか。
そんなささやかな罪によってきっと今こんな辱めをうけているのだろう。
おまけに濡れていたはずの私のアフガンハウンドヘアーはほぼ乾きはじめていた…
美容院ではまず髪の癖を取るためにシャンプーをし、濡れた状態でカットする、と聞いたことがある。
しかし私の髪はほぼ乾いているのだ。
これで、いいのだろうか?
疑問に思っていた頃、アシスタントさんがやってきて、いつものことのように私の髪をおもむろにシュシュシュと霧吹きで濡らし始めた。
あ、アシさんってそういうフォローもやるの?
おそらくこれが通常営業なのだろう。
カリスマはカリスマゆえに簡単にお目にかかることはできないのだ。
それがカリスマたるゆえん。美容師界の天上人なのだ。
私の髪はまた何事もなかったかのように濡れそぼった。
どれくらい待っただろうか…
「もうすぐカリスマがきますので!」という声かけからまた、結構待った後にやっと彼は登場した。
「お待たせしました〜」
インスタの写真を見せ、「こんな風にしたい」と伝えるや否や、わかりました〜と瞬時に髪が切られはじめた。
胸より下まであったロングヘアーを躊躇なく首のあたりで真っ直ぐにザクザクと切っていく。
あまりの速さに、本当に大丈夫なのか不安になっていく。
写真を見せてから切るまでが早すぎて驚いてしまい、相談する時間すら与えてもらえないことにもこの時は気づかなかった。
その間ほんの数分足らず。
私はまん丸のコケシのような髪型になった。
「これはショートの人が伸びたくらいの長さです。これがベースで、ここからまた切って形作っていくんで。」
そう言ってまた去っていくカリスマ。
あれっ?今みていたのは幻??
というくらいあまりに短い滞在時間。
どうやらカリスマのカットは2部制らしい。
なぜか一度では切ってくれず、また焦らしプレイを受けることに。
そして髪を乾かすために再度登場するアシスタント。
今度は逆に、乾かす時間がめちゃくちゃ長い。ドライヤーされている時間の方がカットされた時間よりも全然長い。いやもう乾いてるだろ!という段階でもずーっと髪をいじくり、トークをしながらそれはそれは丁寧に丁寧に乾かしてくれた。
おそらくカリスマが一切接客せず切るだけなので、アシスタントがこういう場でトークをすることで接客面でのフォローをしているのだろう。
おまけに私の分け目は最初の暫定の形のままドライヤーで固められてしまった。
分け目はもう、これでええわ…
なんとなく諦めの境地に入りながらまたカリスマの後半を待った。
ひたすら待った。
子供もさすがにYouTubeに飽きてしまったため、場をつなぐためしかたなく今日ばかりは美容院から提供されるジュースを飲ませた。
何度もお代わりする我が子。
もっと!と要求してくるが、さすがにこれ以上は与えたくない。
ジュースが欲しいとぐずる我が子。
カリスマよ!早く来て終わらせてくれ!とぐずりたいババア。
そこにやっと、カリスマが来た!と思ったら、また一瞬でカットを終わらせ、こんな感じでどうでしょう!と鏡を見せられ終わった。
そこにはインスタに並んでいた可愛いショートカット美女ではなく、
アフガンハウンドから綺麗に切りそろえられたシーズーに変わっただけのブスが座っていた。
私は…夢を見ていたんだなぁ…
髪を切ったからとて顔面が変わるわけじゃないのに。
そんなこと、わかりきっていたのに。
「素直に顔面が悪いんじゃあ」
うちなる千鳥のノブが心をえぐってくる。
自分の顔面のポテンシャルの限界をただただ、思い知ることとなり、素直に「わぁ!」とカットに感動することも出来ず、カットのみで3時間を費やし、通常の美容院でカット➕カラーができるくらいの高いお金を払い帰路についた。
え〜ん、チワワになりたかったワン!
◆美容院名は伏せますがぼやき
グチもあるので嫌な人は飛ばしてください。
あくまで私個人の感想です。
ツイッターでも美容師さんのインスタバズってたからわかる人はわかるかも…
・さすがにお客さん取りすぎでキャパオーバーしている。カットのみで3時間、実質カットされた時間は10分ちょい。シャンプー、ドライヤー除くと殆どが待ち時間。
・カットが早くても出来上がりが素晴らしいならいいでしょ?というスタンスらしいが、あまりに待たせすぎているので、カットが早かろうが普通の美容院でゆっくり切ってもらった方が総合的にかかる時間が少ないため、本末転倒な感じに。
あれだけ切る時間が短いのだからもう少し待たせないような回し方はできないのだろうか?それが出来ないのならやはりお客を一度に取りすぎだと思う。
忙しいオーラもですぎていて相談する時間もろくになく、ゆったりとした美容院の癒し的なものは皆無だった。
・とあるインタビューで、「接客は捨て、カットのみに集中して回し、売り上げを少しでも伸ばしていくスタイル」とあった通り、接客は基本しない。カットの時間も少ないのでまともなトークはしておらず、正直顔も覚えてない。
シャンプーしてくれたアシさんのがよっぽど顔覚えてる。
・ショートカットを売りにしているため、ショートの人はだいたいこんな感じで!と自分の中でスタイルが決まっているのかもしれない。細かい相談は一切出来ず、写真を見せたらすぐさまカット開始。細かいニュアンスなどは相談できず。
・売り方、夢の見せ方がうまい。
インスタで「絶対に可愛くする」と美女の写真並べ、ストーリーで自分を褒めてくれている投稿をあげまくり、こんなにみんなが褒めているのなら!他の人とは違うのでは!新しい自分にで会えるのでは?と夢を見せるのが上手。
だが!顔面自体は絶対に可愛くならないから限界がまだあるのじゃ!!(八つ当たり)
実際はカリスマのメンションつけると必ずストーリーにあげてくれるから、それが嬉しくて投稿している人も居ると思う。
マーケティングの勝利。
・どんな人でも似合わせるとあるが、似合う似合わないはやっぱりある。疲れすぎたからというのもあるからか、出来上がりにそこまでの感動を得られず。残念。
・費やした3時間に見合うほどの価値は私にとってはなかった。時は金なり&美容院はある程度の癒しが欲しいので、そういう人には向いてないかも。カットが良ければなんでもOKなら問題ないのかも。
以上ぼやきでした。
Twitterもよろしくね。